「させていただきます」の文法分析

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今回のテーマ

以前に3回分の記事で「させていただきます」の記事で、その使い方を説明しました。



させていただきます」(させていただく)が使えるのは(1)相手の許可により、(2)自分が恩恵を受けられる、場合のみですが、なぜこのような条件になるのでしょうか?

今回は、この理由について解説します!


「させていただきます」の以前の解説記事については、以下のリンクからご覧になってください。

「させていただきます」の使い方には気をつけろ!①
「させていただきます」の使い方には気をつけろ!②
「させていただきます」の使い方には気をつけろ!③


解説

「いただきます」

「させていただきます」の「いただだきます」は「もらいます」の謙譲語です。


「もらう」は「受け取る」という意味の他に、補助動詞として、動詞(もしくは助動詞)の連用形に接続助詞「て」を付けるという用法があります。


この補助動詞「もらう」は「相手の行為によって自分が利益や恩恵を受ける」という意味があります。(用法の1つです。他に用法はあります。)


例文
「兄に勉強を教えてもらう。」
「医者に診察してもらう。」
「友達に一晩泊めてもらう。」


例文を見れば分かるように、自分の依頼によって、他人の行為を受けるというニュアンスが強いです。



「させて」

「させて」は「させる」という動詞や助動詞の連用形で、「放任・許容」の用法です。


この「させる」は相手にも自分にも使えます。

相手に使うと自分が相手に対して「許容・放任」しているという意味になります。


「子供を公園で遊ばせる」

→「子供が公園で遊ぶことを許容する」という意味。(但し、この文章は「使役」の意味にも解釈されます。つまり、「子供が運動をしないから、無理矢理、外で遊ばせるという意味にも解釈できます。文脈によって使い分けましょう。)



一方、「させる」を自分に使うと、自分が相手からの「放任・許容」を受けている形になります。


「ちょっと考えさせてください。」
→相手の許可を求め、考える時間を要求する意味。

「少し休ませてください。」


結論

上記の説明から「させてもらう」とは、相手の放任や許容によって、自身が恩恵や利益を受ける場合に使えることが分かると思います。


そして、「させていただく」は「させてもらう」の単なる謙譲語表現なので、用法は「させてもらう」と変わりありません。


「いただく」という表現が、恩恵を受ける意味である「もらう」から成立していることを忘れてしまったために、恩恵が無いのにもかかわらず、「させていだく」を使ってしまうことになったのだと推測します。


「もらう」という言葉を思い出せば、恩恵を受ける意味があるのは明らかでしょう。



そして、「させる」という許可・放任の動詞や助動詞がつくので、常に「許可」を受けた形で恩恵を受けなければなりません。


したがって、例えば、「自己紹介させていただく」が多くの場面において誤用なのが分かるでしょう。


自己紹介は許可を受けて、するものではなくて、自分からしなければならないもので、恩恵も受けません。
冗長な表現と言えるでしょう。


次回予告

「させていただきます」に関する、次の記事は日本社会で見られる「させていただきます」の具体例を見ながら、その正否を判断し、その「させていただきます」がどのような意味なのかを解説します。