今回のテーマ
文法的に正しい言い回しであっても、実際に書いたり、話したりすると話の聞き手が話し手に対し好ましくない印象を持つ場合があります 。
今回は「かたち(かたち)」という言葉に焦点を当てたいと思います。
余計な「かたち」を外す。
2つの例文A・Bを提示します。
A
お振り込み方法は、分割払いというかたちと一括払いというかたちがございます。分割払いというかたちですと、毎月26500円をお払いいただくかたちとになっておりまして……」
渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.16.
B
お振り込み方法は、分割払いと一括払いがございます。分割払いですと、毎月26500円をお払いいただくことになります」
渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.16.
Aは言い方を丁寧にしようとして、「かたち」を付けていますが、逆に回りくどくて耳障りです。
解説
「かたち(形)」
この「かたち」は「一定のまとまった状態をもって表に表れた、物事の姿。形態。」という意味です。
例文
「制度としては三審制のかたちをとっている。」
『一口に「国家」と言ってもさまざまなかたちがある。」
「学校というかたちをとらない教育形式。」
「代表というかたちで出席する。」
「かたち」を削除したり、言い返したりした例文
「制度としては三審制をとっている。」
『一口に「国家」と言ってもさまざまある。』
「学校という形式をとらない教育形式。」
「代表で出席する。」
これらのように言い直しても問題ありません。
「かたち」が有る場合と無い場合の違い
「制度としては三審制のかたちをとっている。」
『一口に「国家」と言ってもさまざまなかたちがある。」
「代表というかたちで出席する。」
「制度としては三審制をとっている。」
『一口に「国家」と言ってもさまざまある。』
「代表で出席する。」
これらの2文は「三審制」や「国家」や「代表」という抽象的な概念を「かたち」という言葉で具体性を出すことが出来ています。
さらに別の観点から分析するためにもう一度この例文を挙げます。
「代表というかたちで出席する。」
「代表で出席する。」
「かたち」が有る場合、「かたち」の別の意味としても解釈できます。
「表面的・形式的な側面」という意味にもなります。
したがって、言い換えると、「表向きの理由としては代表であるということで出席する」という意味になります。
まとめ
「かたち」はよく使われますが、使いすぎると耳障りです。
ただ、便利な言葉でもあるので、使い方を覚えて会話をスマートにしましょう。