会話をスマートにする! 無意味な言葉を削ろう!⑥

Pocket

今回のテーマ

第6回は前回の「ほう」の議論の続きを解説します。

前回の記事はこちらのリンクからご覧ください。
会話をスマートにする! 無意味な言葉を削ろう!⑤

前回のまとめ

「ほう」批判派に対して、日本語学者は「ほう」の使用方法は歴史的な根拠があり、問題ないとしているも、「ほう」の直前に来る名詞が具体的過ぎると不自然に感じるとしています。

以上のまとめより、例文の解釈をしてみます。

例文の解釈

「こちらのほうの保険のほうをお選びいただければ、安心です。資料のほうはすぐにご用意いたします」

渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.16. 

一文だけなので具体的な前提条件は分からないのですが、起こり得る場合を考えて説明します。

「こちらのほう」

①提示している保険の資料が複数あれば、「こちらのほう」をつけても問題ありません。
②また「ほう」が無くても伝わります。
③提示している保険の資料が1つしかない場合は、使うと不自然でしょう。なぜなら顧客の目の前に保険の資料 あるためです。
一般的にこのような例文が出る場合、③のパターンです。

「保険のほう」

①保険以外にも提示していて、その中から保険を選び出して提示しているなら使っても問題ないです。
②「ほう」が無くても伝わります。
③提示している資料が保険だけなら、不自然です。
④そもそも、「保険」直前に「こちらの(ほう)」とついていて、どの資料が限定されているので、わざわざ「保険」の後ろに「のほう」とするのも不自然です。

総合的に考えてこの「ほう」は不自然です。

「 資料のほう」

①説明をするために資料以外に何を用意するというのでしょうか? この表現は不自然です。

したがって、この例文は「ほう」が多くて冗長なのです。

例文の解釈②

前回の記事で、正しいとされる例として以下の3文を挙げました。それぞれ解釈してみます。

①「将来音楽のほうに進みたい」
② 「父は防衛省のほうに勤めています。」
③ 「近頃、ご家庭のほうはどうですか。」

① この「ほう」は「方面」、「分野」、「道」と言い換えが出来ます。「音楽に進みたい」でもいいですが、「音楽」という抽象的で実体の無いものに対して、「進む」ために方向性を「ほう」という語が与えて違和感がないと考えられます。

② 防衛省は確かにビルとしは存在して具体的なのですが、勤務先として防衛省は法人であるため、抽象的な存在なので「ほう」があっても問題ありません。しかし、単純に「防衛省に勤めています」と書いても問題ありません。わざわざ「ほう」で曖昧にする理由もないでしょう。

③ 「家庭」に「ほう」をつけることで、「家庭」という抽象的なものがイメージしやすくなっています。
  もちろん、「家庭はどうですか」と訊いても問題ありません。

まとめ

二回にわたって「ほう」について解説しました。

使ってもいい言葉なのですが、不必要に多用すると不快感を聞き手に与えますので、今回の記事でよく勉強して気をつけましょう。