今回のテーマ
文法的には正しい表現であっても、相手を不快にさせたり、相手に自分自身を稚拙に感じさせたりする場合があります。
今回は「ありえなくないですか」という言葉について考察します。
渡辺由佳の 「会話力の基本」( 日本実業出版社より 2011年出版 )を引用し、原本よりも詳しい解説を行います。
非難の度合いが強過ぎる「ありえなくないですか」
2つの例文AとBを挙げます
A
夏休みを有給と合わせて取った後輩について上司に尋ねた際、
「2週間も続けて休むなんて、ありえなくないですか?」
渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.21.
註 「ありえなくないですか」は「有り得ないじゃないですか」や「有り得ないのではないですか」等の意味と同じです。
B
「2週間の連続の休みには、驚きました。」
渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.21.
「ありえなくない(ですか)?」は質問をして相手の意見を訊く言葉ですが、「じゃないですか(ぁ)?」と同様に、内心、相手に自分の意見に同意を求めている言葉です。
つまり、「じゃないですか(ぁ)」と同様に自分の気持ちを押し付けている言葉です。
「じゃないですか(ぁ)?」についてはこちらの記事にまとめていますのでリンクをクリックしてご覧ください。 |
Aの発言者は後輩が2週間も休んだ事実に「少し驚いた」という程度で使っているというぐらいの意識でしょうが、無意識に非難するニュアンスも含まれてしまっています。
ですから、単純に「驚いた」と言う方が、聞き手に対して同意を強制させない点で配慮があるといえます。
加えて、「ありえなくないですか」という言葉遣いは少々幼稚な感があります。避けたほうがよいでしょう。
ちなみに、Aは酷い例文ですね。労働者が休みを取る権利は法律で守られています。著者はなぜこのような例文を採用したのでしょうか?笑
まとめ
「ありえなくないですか」は日本人が多用しますが、使わないほうが賢明でしょう。
不必要に他人を批判することは無益ですから、このような言葉は真似をしないようにしましょう。