今回のテーマ
例文を用いた解説
実際の例
以下の文章は実際にある中国人の学習者から頂いた質問です。
「会社はもう困難な時期、いわゆるいばらの道を過ごした。
今後も万事順調ではないが、すでに軌道に乗ったに違いない。」
っていう文が正しいですか?
今回問題となるのは「文が正しい」ですかという表現ですね。
「が」を使うことが完全に間違いであるという訳ではないのですが、ここは「文は正しい」と書いたほうが自然です。
「は」は「ある1つのもの関して言えば」という意味です。
「が」を用いると、述部(ここでは「正しい」の部分)の内容に当てはまるものを、ある範囲の中から選び出した意味合いがあります。
すなわち、 「が」を用いることで想定されるこの文章の前提条件は、本例文以外の例文も複数が存在してて,その中から本例文を質問者が選び出して「正しい」かどうかということを訊いているという状態になっています。
別の例文で確認してみましょう。
「山田さんが次の部長だ。」 (次の部長になれる可能性のあった人は同じ部署にたくさんいたが、その中で山田さんが選ばれたという意味)
「ロボット工学に関して、東京大学が一番進んでいる。」(ロボット工学を研究している大学はたくさんあり、その中でも東京大学が最も進んでいると考えられるという意味)
一番最初に例文に戻ってみましょう。
質問者は1つの質問しか私に訊いていません。私は他の例文の存在を知りません。したがって、聞き手である私は少し不自然に感じるのです。
「が」と「は」をそれぞれ用いた場合の比較
例:彼はフランス人だ。(彼のことしか指していない。単にフランス人であるという事実を述べている。)
彼がフランス人だ。彼女が(は)ドイツ人だ。(二人という範囲のうち男性の方だけを選び出してフランス人と判断している。)
*ここの「が」は「は」に入れ替えることができます。詳しくは第2回をご覧になってください。「対比」を表す際は「~は~である。~は~である」という教科書の説明も正しいですが、「が」にも入れ替えることができます。
「彼女が(は)ドイツ人だ。」という文は言外に「(彼女はフランス人ではなく)ドイツ人だ。」という意味があります。
部長は出かけています。(部長のことだけしか言っていない。単に部長が出かけているという事実を述べている。出かけている人は部長しかあり得ないという状況)
部長が出かけています。(会社の中で出かける可能性のある人は複数存在して、その中で今回は部長が出かけたという意味。)
主語を作る「が」との関係
「が」は主語を作れる助詞なので、確かに単体でも使えます。
例文
「太郎が学校に行く。」
「犬が鳴く。」
「水が流れる。」
しかし、意味の前提は具体的には示されていませんが、無意識に一定の範囲内の中から選び出しています。
つまり、「学校に行く生徒大勢の中の太郎」、「鳴く動物・虫の中の犬」、「全ての流れる物の中の水」ということです。
まとめ
「が」と「は」の大きな違いについて説明しました。「が」という助詞は、基本的に、ある範囲から選び出されたものを示す効果があります。1つのことを示す際は「は」を使いましょう。
次回は両者の違いへの理解をさらに深めるために、より詳しい解説を行います。
ぜひ、「が」と「は」を用いた文章がある際は、連絡を頂ければ添削します。