今回のテーマ
文法的には正しい表現であっても、相手を不快にさせたり、相手に自分自身を稚拙に感じさせたりする場合があります。
今回からは、そのような不適切な表現の例として、語尾の例を挙げて解説します。
渡辺由佳の 「会話力の基本」( 日本実業出版社より 2011年出版 )を引用し、原本よりも詳しい解説を行います。
返答に困る「じゃあないですかぁ」
2つの例文AとBを掲載します。
A
上司から頼まれた仕事を「まだ?」と催促された際、
「私って、のんびりな人じゃないですかぁ」
渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.20.
B
「仕事が遅くて、申し訳ありません」
渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.20.
Bの表現はあくまで一例であり、必ずBのように返答しなければならないとうわけではなく、Aのような表現をやめることをお勧めします。
Aの返答の問題点
①上司の質問に答えていない
形式的な問題ですが、上司が「まだ?」と訊いているので、「まだです」や「もう少し時間がかかります」などのように、質問に直接答えるべきですが、Aは自分の性質を答えるだけで、直接答えていません。
会話の構造としては「のんびり」と返答することで、「まだ時間がかかる」ということを聞き手に想定してもらいたいという意図があります。しかし、聞き手としては質問に直接答えてもらえなかったので、不満が残ります。
②意見や認識の押し付け
このトピックがこの記事の重要な点です「じゃないですか(ぁ)」
「じゃないですか」の前の内容共有を聞き手に押し付けている構造と成っているので、聞き手が不快に感じます。例文で考えてみましょう。
Cさん:「あの店のラーメンはまずいじゃないですか」
聞き手のBさんがおいしいと思っていたら、まずいと他人に決め付けられたら不快になる場合もありますよね。
「じゃないですか」の前の内容が多くの人に共有されている事項、または客観的な事実なら問題になりません。例文で考えてみましょう。
Cさん:「日本の人口は約1億2000万人じゃないですか」
日本の人口の数に対する認識は、ほぼ客観的な事実なので、誰も不快にしませんね。
では、Aの例文で考えてみましょう。
「私って、のんびりじゃないですか」
発言者が「のんびり」であることは発言者自身の認識であり、聞き手である上司は「のんびり」であるという認識を共有していない、または知らない(たとえ知っていたとしても、上司には関係ない)ので不快になります。
上司は「あなたがのんびりであればどうなの?」と思うでしょう。
③不必要の語尾の長音化
「じゃないですかぁ」の「ぁ」のように、不必要に伸ばす音を入れると稚拙な印象をもたれます。やめましょう。
適切な「じゃないですか」の用法
事実確認をするために、「じゃないですか」と使うのは問題ありません。
但し、気をつけて欲しいのは、本当にそれが事実なのかどうかは言う前に確かめてください。
例文で考えましょう。
「彼は今どこにいるんだっけ?」
「確か、今ごろ、予定表だと上海じゃないですか。ちょっと訊いてみましょう。」
まとめ
「じゃなですか」の使用の注意点をまとめました。
具体的な事例等、何か質問がある場合は遠慮なくどうぞ。